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十年目の結婚記念日が近づく今日、いつものように妻へ贈り物をしようと、宝石店を訪れた。
すると高価な指輪の並ぶショーケースの隣に、妙なものがあった。
「こちらは百色節眼鏡でございます」
百色眼鏡は確か、万華鏡のことだ。けれど、節眼鏡とはどういうことだろう。
「よろしければ、覗いてみてください」
促されるまま目を近づけると、筒の中にはビーズや紙ではなく、懐かしい顔が映っていた。
若い両親と姉。それと小さな赤ん坊の私。輝く家族は傾けると一度形を崩して、次々に像を結んだ。どの記念日も温かく、笑顔に満ちていた。
筒をさらに回すと、妻との結婚式が映った。幸せそうに微笑む妻は、幾分若い。
けれどそれを最後に、何度像を結んでも、映るのは一人食事をしている妻の、寂しそうな顔だけだった。
「今日は帰ります」
オーナーに断ると、私は家へ急いだ。
妻と二人、色とりどりの笑顔で過ごせる明日は、幸い今日の先にある。
すると高価な指輪の並ぶショーケースの隣に、妙なものがあった。
「こちらは百色節眼鏡でございます」
百色眼鏡は確か、万華鏡のことだ。けれど、節眼鏡とはどういうことだろう。
「よろしければ、覗いてみてください」
促されるまま目を近づけると、筒の中にはビーズや紙ではなく、懐かしい顔が映っていた。
若い両親と姉。それと小さな赤ん坊の私。輝く家族は傾けると一度形を崩して、次々に像を結んだ。どの記念日も温かく、笑顔に満ちていた。
筒をさらに回すと、妻との結婚式が映った。幸せそうに微笑む妻は、幾分若い。
けれどそれを最後に、何度像を結んでも、映るのは一人食事をしている妻の、寂しそうな顔だけだった。
「今日は帰ります」
オーナーに断ると、私は家へ急いだ。
妻と二人、色とりどりの笑顔で過ごせる明日は、幸い今日の先にある。
その他
公開:19/12/04 00:41
節目
高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。
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