二十歳
12
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私は今日、二十歳になる。そして母と話をしなくなってから、十五年になる。
幼い頃、私はずっと母の後をついてまわった。お買い物に行く時も掃除や料理をする時も。美人で明るい母が好きだった。
その時期は母も私のことが大好きだったと思う。毎日、抱きしめて、頭を撫でて私を褒めた。ひろ子が世界で一番かわいい、って。
それが今は何も言ってくれない。昔は、五歳をすぎたら皆、母親とは話さないものなんだと思っていた。でも当然、それが異常だって今はわかる。
「もう十五年も話してないのよ、私とお母さん。お父さん、今日ははぐらかさないで教えて」と私は父に詰め寄った。
「俺も真実は知らない。でも、ひろ子、五歳の誕生日に転んで膝を切っただろ」
私は膝に少し残る傷を撫でて頷いた。
「あの日から完璧じゃなくなったんだ、お前は。母さんにとって」
そうか、あの日からお母さんの話し相手は一人もいなくなったんだ。
幼い頃、私はずっと母の後をついてまわった。お買い物に行く時も掃除や料理をする時も。美人で明るい母が好きだった。
その時期は母も私のことが大好きだったと思う。毎日、抱きしめて、頭を撫でて私を褒めた。ひろ子が世界で一番かわいい、って。
それが今は何も言ってくれない。昔は、五歳をすぎたら皆、母親とは話さないものなんだと思っていた。でも当然、それが異常だって今はわかる。
「もう十五年も話してないのよ、私とお母さん。お父さん、今日ははぐらかさないで教えて」と私は父に詰め寄った。
「俺も真実は知らない。でも、ひろ子、五歳の誕生日に転んで膝を切っただろ」
私は膝に少し残る傷を撫でて頷いた。
「あの日から完璧じゃなくなったんだ、お前は。母さんにとって」
そうか、あの日からお母さんの話し相手は一人もいなくなったんだ。
その他
公開:19/12/03 23:17
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