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 炬燵の前で音量を下げて紅白を見ていると、襖を開けて奥さんが出てきた。

「寝た?」
「うん」
「夜食作るよ」

 僕は台所に向かい、先週実家から届いた段ボールから竹筒を取り出した。
 水が沸騰した鍋に入れると、竹筒は淡黄色に変化し、目に見えない節目がいくつも剥がれていく。数分もすると、無数の節麺が鍋を泳いだ。
 茹で加減を確認するため、麺を掬って口に入れると芝生の匂いがした。蝉の声も聞こえる。娘が初めて自転車に乗れた日の公園の風景が甦った。

「あれも節目か」

※※※

「お待たせ」
「わあ。ありがとう」
 僕は丼を炬燵に置くと麺を啜った。奥さんは手をつけなかった。
「どうしたの」
「ごめん」
 奥さんは口を抑えて部屋を出ていった。

 カリッ

 麺に芯が残っていた。産まれたての節麺は茹でるのに時間がかかる。
 僕はテレビを消して、襖の向こうから聞こえる長女の寝息に耳をすませた。
公開:19/12/03 22:36
更新:19/12/27 18:14
節目

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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