オムライス

2
5

いつからか妻との会話は少なくなっていた。
結婚して十数年。若く美しかった妻も、今では何処にでもいるオバサンになった。
とは言うものの、私もオジサンになってしまった。

残業を終え満員電車に揉みくちゃにされ、疲労困憊で帰宅する火曜日。
スーツから部屋着に着替えると、妻はいつも通り何も言わずに夕飯を並べた。

普段は和食ばかりの食卓だが、今日は珍しくオムライスとコーンポタージュが並んでいた。
相変わらず妻は黙りで、夕飯を口にする。

ふと、テレビに目をやった。
今日は11月22日。世間で言う良い夫婦の日ってやつだ。
その時、ふと懐かしい記憶が蘇った。
同棲して初めての食卓。今日と同じオムライスとコーンポタージュ。

「あの時も、オムライスだったな」

「え・・・・・・覚えていてくれたの?」

その時、僕の目の前には当時の姿の妻がいた。
恋愛
公開:19/12/05 17:27
オムライス 食事 夫婦 日常

智琉誠。

太宰治先生と三島由紀夫先生で義務教育を終えました。売れない作家をやっています。

日常を切り取った短編を書くのが好きです。
若輩者ですが、ノスタルジックな作品が書けるようになりたいです。宜しくお願い致します。

連載はこちらから
https://m.magnet-novels.com/my/novels

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容