見える女

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「あの子と付き合うと、成功するんだよね」
すっかり噂になっている。私の能力を知らない人から見れば、不思議なのだろう。

私には、人の将来が見える。交際相手を選んでいるから、出世するのは当たり前。

高級レストランのデートは楽しかった。ただ、みんな仕事にしか興味がない。
「取引先から連絡が入った」
帰ってしまう彼らに、寂しさを感じていた。

デートをすっぽかされた夜、一人でバーに入った。すっかり酔いつぶれてしまう。

「ちゃんと帰れますよ」
店を出ようとすると、腕をつかまれた。マスターだ。
いい人だが、だまされて借金を背負っている。今までの男性からすれば、問題外だ。

けれど、この人は違った。私を本気で心配してくれている。

「マスター、今夜は店にいてもいい?」
酔っ払い相手に、ずっと話を聞いてくれた。

そうか、成功するだけが人生じゃないんだ。

今、彼の店で一緒に働いている。
その他
公開:19/12/05 13:54
更新:19/12/05 13:58
節目

ろっさ( 大阪府 )

短い物書き。
皆さんの「面白かったよ!」が何よりも励みになります。誰かの心に届く作品を書いていきたいです。

54字の物語・更新情報はTwitterでチェック! ぜひ遊びに来てください。
https://twitter.com/leyenda_rosa

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