とんでかえる

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今日は私の五十歳の誕生日。そして、ヒーロー引退の日。
正体を隠し、三十年間諸悪と戦ってきた。そんな日々も今日で終わり……ではない。

実は引退の節目の後、半年間引き継ぎがある。新人ヒーローと同行して指導するのだ。今日の会社終わりにビルの屋上で初顔合わせの約束だ。

会って、私は心底驚いた。

「達也!」
息子だった。
「驚いた?……大学帰りに偶然見ちゃったんだ、父さんが戦ってるとこ。それで、なんか俺も、って」

息子の目は輝いていた。最近ろくに話もしていなかったが、まだ私のことをそんな眼差しで……。

「……楽な世界じゃないぞ」
その時、イヤホンから声が聞こえてきた。
「ほら、早速困っている人がいる」

「遅いわね……誕生日のごちそう、冷めちゃうわ」

「か、母さん!」
二人の声が合う。
「いいか新人、今は世界平和よりまず……家庭平和だ!」

変身した私と息子は、夜空を飛んで家路を急いだ。
ファンタジー
公開:19/12/05 00:40
節目

makihide00( 鳥取→東京→福岡 )

30代後半になりTwitterを開設し、ふとしたきっかけで54字の物語を書き始め、このたびこちらにもお邪魔させて頂きました。

長い話は不得手です。400字で他愛もない小噺を時々書いていければなぁと思っております。よろしくお願いします。

Twitterのほうでは54字の物語を毎日アップしております。もろもろのくだらない呟きとともに…。
https://twitter.com/makihide00

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