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ジャズが流れる、ありふれたバーに二人は居た。

「私、ロングアイランドアイスティー」

「君はいつもそれを飲むね」

彼は愛おしそうに笑った。
しかし今日の彼女は、憂鬱そうな顔だった。

「そういえば、話があるって言ったよね?」

珍しく彼女からのデートの誘いだった。物静かなバーテンダーが、グラスを差し出すと、彼女は少し下品に一気に飲み干した。

「お客様、お次は何にいたしましょう」

「XYZをお願い」

一気に飲んだせいか、彼女の目が潤んでいる。その上、普段頼まないカクテルに、彼はなんだか違和感を覚えた。

バーテンダーは、すぐに彼女の注文したドリンクを用意した。

「話したかったことは、このカクテルに詰まってるわ」

彼女はグラスを傾ける。

「XYZの後ってないでしょう?」

そのカクテルが、彼女が僕の前で最後に飲んだ一杯だった。
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公開:19/12/04 22:11
更新:19/12/04 22:29
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智琉誠。

太宰治先生と三島由紀夫先生で義務教育を終えました。売れない作家をやっています。

日常を切り取った短編を書くのが好きです。
若輩者ですが、ノスタルジックな作品が書けるようになりたいです。宜しくお願い致します。

連載はこちらから
https://m.magnet-novels.com/my/novels

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