260. Run away！

支度を済ませ、朝食を摂りつつスマホでニュースを見ていてある記事に目が留まり、カタカタっと骨を鳴らした。日本で今日の昼間、骨格標本たちが次々と逃げ出したと言うのだ。まさかそんなことって…。きっかけは一人の男子高校生らしい。
昼休み、母親の作ってくれた弁当の包みを開け、箸が入ってないことに気が付いた。先生に告げ、割り箸をもらおうとしたが、ふと、四時間目の授業で使った骨格標本を思い出し、橈骨を二本引き抜き箸にしたらしい。その節のカーブ具合が程よく食べやすかったので写真を撮りSNSにアップ。それを見た全国で箸を忘れた学生が、次々と真似をしたらしいのだ。
そしてそれをたまたま、無人の理科室のPCで見ていた世界中の骨格標本たちが、危機を感じそれぞれ学校から逃げ出し警察沙汰になったというのだ。

俺はコートをはおりマフラーと帽子をつけると、勤めている学校へは連絡を入れず、こっそり家の裏門から抜け出した。