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12月初旬の夕暮れ迫る大磯プリンスのインフィニティープールには先客がいた。海側の縁に両腕を組み、そこへ顎をのせて海を眺めている老人。私が温かなプールへそっと浸かると、水輪がその老人の背を撫でた。
私も海側へ進む。濃紺の海に紅蓮の波が埋め火のようだ。ロングビーチのヤシの木や飛び込み台、ウォータースライダーなどは、みなシルエットとなって沈黙していた。
「僕はここが好きです」
と、唐突に老人が言った。声は驚くほど若々しく滑舌も良かった。
「よく、おみえになるのですか?」
そう尋ねながら、そっと老人の顔を見る。高い鼻と長い睫が逆光に映える。もう遊び尽くした、という顔に見えた。
「ホームのようなものでした。百人以上でよく集まって、バカをやったものです」
老人はそう言って立ち上がると、ロングビーチに向かって両腕を広げた。寒風の中、私の耳に「司会のおりも政夫です」という、楽しげな声が聞こえた。
私も海側へ進む。濃紺の海に紅蓮の波が埋め火のようだ。ロングビーチのヤシの木や飛び込み台、ウォータースライダーなどは、みなシルエットとなって沈黙していた。
「僕はここが好きです」
と、唐突に老人が言った。声は驚くほど若々しく滑舌も良かった。
「よく、おみえになるのですか?」
そう尋ねながら、そっと老人の顔を見る。高い鼻と長い睫が逆光に映える。もう遊び尽くした、という顔に見えた。
「ホームのようなものでした。百人以上でよく集まって、バカをやったものです」
老人はそう言って立ち上がると、ロングビーチに向かって両腕を広げた。寒風の中、私の耳に「司会のおりも政夫です」という、楽しげな声が聞こえた。
ファンタジー
公開:19/12/03 10:48
更新:19/12/03 13:49
更新:19/12/03 13:49
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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