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満月の夜。工事中のロープをくぐり抜けると若い男に呼び止められた。どうやら私を徘徊老人と勘違いしているらしい。
さて、どう説明したものかと困っていると、現場責任者らしき男が私を見つけてくれた。
挨拶もそこそこに、高架の途中まで伸びた高速道路の端まで案内される。その先には道のない高架が曲線を描いて遠くまで伸びていた。
イメージ通りだ。道路屋はいい仕事をしている。
膝をついてアスファルトの感触を確かめ、巾着からミチノコの種を取り出し、アスファルトに植えた。それから瓢箪に入れた水を注ぎ、待つこと数分。ミチノコが芽を出しニョキニョキと道路に成長した。私は節目に刺激を与え、道路を伸ばしながら、高架に節目が乗るように形を整える。成長し、腰を降ろした節目はジョイントへ姿を変える。
数時間後、竹のように節目をつけながら伸びた新しい道路が高架を繋いだ。
「もう完成したの!?」
驚く若い男の背から朝陽が昇った。
ファンタジー
公開:19/12/03 00:09
更新:19/12/03 07:31

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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