5
5

 エンマ大王は目を閉じた。
天国に行けるのか。
エンマ大王が目を開けたら告げられる。
男は黙ってその時を待った。どのくらい待ったであろうか。
さっきまで自分の後ろには2,3人しかいなかったが、
振り返ると今は何千何万といる。『エンマ様、エンマ様』お付きの者が体をゆするが、エンマは全く動かない。後ろの奴らがザワザワし始める。
やがてエンマ大王によく似た格好の若者が入ってきた。
『え~、あ、あなたは』
どもりながら一生懸命にしゃべっている。
どうやらエンマも年でその役を息子に譲るらしい。
そして聞こえてきた言葉が『天国でいいかな』『いいかなってなんだよ、もっと真剣に告げろよ』
男は心の中でそう思ったが黙って礼をしてその場を立ち去った。そのエンマの息子らしい若者、後に何万人といるのを見て少し困った顔になり、
やがてマイクを持って一言。
『全員 天国で~す』
そして、あの世は歓喜の声に包まれた。
その他
公開:19/12/02 19:42
更新:19/12/09 20:18

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容