ヒポさん

僕の上司であるヒポさんはとても優しい。
いつも周りに気を使い、その変化にいち早く気付く。
新入社員の僕は勿論、部署の皆のカバーを一手に担っている。
大柄な体におおらかな性格。まるでカバみたいだからとヒポポタマスからヒポさんと呼ばれている。
ヒポさんは皆から愛されている。
でも、それならカバさんでいいじゃないか。名前も椛島さんだし、何でヒポさんなんだろう？
その疑問を部長に聞いてみた。
「アイツ、昔カバって呼ばれていじめられていたんだ…そのこともあって、普段は皆に気配りの出来るいい奴なんだけど、少しでも悪意を持って『カバ』なんて言ったら、手が付けられない程に大暴れする。いいか。野生のカバも、ウチの椛島も、怒らせると一番怖い奴だ。だから、絶対に怒らせるんじゃないぞ」
冷や汗を流しながらそう話す部長。
ああ…いじめていたのってこの人だな…
その証拠に、部長を見るヒポさんの目と声色は何故か怖い。