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桃太郎は夜泣きがひどかった。それは二つの老体にはかなりこたえた。川で拾ってきて以来、三時間続けて眠れたことがない。しかも桃太郎は母乳に依存していて、ちっとも離乳食を食べてくれない。母乳というのはおばあさんの、である。不思議なことに生まれた日から出始めたのだ。ところが昼も夜もあげるのは肩がこって仕方がない。ここだけの話、好物の酒が飲めないのも辛い。
「自分の歳も考えず、赤子の登場に浮かれ、育てるなどと決めてしまったが、夫婦二人だけで静かな余生を愉しむべきだったのだろうか……。」
二人とも心のなかでそう思ったが、口には出せずに苦しんだ。
ところがある日、おばあさんが気晴らしに作ったきびだんごを、玩具と間違い口に入れた桃太郎は途端にすっくと立ち上がり、そのままむくむくと十五の青年に。「鬼退治に行く。」と言って出て行ってしまった。振り返りもしなかった。
二人はその日を節目にめっきり老け込んだ。
「自分の歳も考えず、赤子の登場に浮かれ、育てるなどと決めてしまったが、夫婦二人だけで静かな余生を愉しむべきだったのだろうか……。」
二人とも心のなかでそう思ったが、口には出せずに苦しんだ。
ところがある日、おばあさんが気晴らしに作ったきびだんごを、玩具と間違い口に入れた桃太郎は途端にすっくと立ち上がり、そのままむくむくと十五の青年に。「鬼退治に行く。」と言って出て行ってしまった。振り返りもしなかった。
二人はその日を節目にめっきり老け込んだ。
ファンタジー
公開:19/12/05 14:00
更新:19/12/05 13:37
更新:19/12/05 13:37
節目
桃太郎
老夫婦
セカンドライフ
育児
育児疲れ
おとぎ話を一粒、どうぞ。百字物語から長編までファンタジーを中心に執筆。ブログでは他に、怖くない怖い話や育児エッセイなど、多重人格に文と絵を書き(描き)分けています。仕事ではコピーライター10年。2019年、フリーに。まずはZINEをつくりたいと思っています。共にコラボできる方など高め合える人ができたら嬉しいです。
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Twitter: angaikikuko
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