お金の移動手段

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Aはサンタを見てイラッとした。善人面が鼻につく。Aはスリ。いい事を思いついた。
「サンタさん、助けて」
Aは渾身の演技をサンタにぶつけた。この街の住人が、お金にタクシー代わりに移動手段として使われ、困っていると信じ込ませた。
「逮捕したお金は私の黒いバックに」
Aの思惑通り、あのサンタが次々、人からお金を巻き上げていく。愉快至極。
その時、ふとAは幼少期を思い出した。初めていい事をしたクリスマス。両親に「人がキレイ事で生きてけるか」と叱られ泣いた。が、翌朝。枕元にあったのはサンタからの贈り物。いい事をする事が、実は嬉しい事を忘れられない事を思い出した。
ふと我に返る。そのサンタが今、お金を巻き上げている。優しく。
「それダメ!サンタさん、首!危なくて見てられない」
このまま見続けたら、自分まで人はいい人でいなきゃ、と思ってしまう。ああ、危ないところだった。人間をダメにするサンタクロースめ。
ファンタジー
公開:19/12/03 19:44
スクー 人間をダメにするサンタクロース

久保田 人月

よろしくお願いします。
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