白狐神

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「25年前、俺はこの神社で白狐石を盗んだ。そして飲み込んだ」
天(テン)のその無垢な瞳。天は神の血を引く狐。あの頃の少女の姿のままだ。
俺のお腹のあたりと、天の体全部が黄金に光っている。
「天が白狐神の位を継ぐのが嫌だった。石がなければ継げないだろ。継がなければ毎日遊べると思った。子供の俺の浅はかな望みだよ。さあ、俺の腹を裂いて石を取り出してくれ」
どのみちもう長くはない。だから天に石を返しにきた。
天は何の躊躇いもなく、俺の腹を手で突いた。不思議と痛くはなかった。腹の中の石と共に俺の意識は消失していった。
目覚めると病院のベッドだった。
「何があったんですか。あなたの腹部にあった癌がすべて消えています」
医師に言われ、両手で顔を覆う。母親の死後、神の位も継げず神社でひとりで生きてきた天。お前は俺を許してくれたのか。

神となった天が、鳥居の上で凛と立つ姿が見えた気がした。
さようなら天。
ファンタジー
公開:19/12/03 19:02
更新:19/12/04 08:57

深月凛音( 埼玉県 )

創作が大好きなアラフォー主婦です。ショートショート小説に魅入られ、日々精進中です。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』

Twitter : https://twitter.com/rinne_midzuki

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