人生の先で、会えたら話そう。

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祖父の命日を迎える度に振り返る。

小学生のときに亡くなった祖父とは、あまり交流が無かった。
祖父は体が弱く、ずっと遠くの病院に入院していて、なかなか会えなかったのだ。

だからか、祖父が亡くなったときには実感が全く持てず、涙は出なかったし、そんな自分のことを子供なりに軽蔑した。


思い出も片手で数えるほどしかなく、私には祖父の為人を説明することは難しい。

ただ、一つだけ確かなことがある。
それは、僅かな記憶や写真の中の祖父は、いつも穏やかな笑顔だということだ。


祖父の人生には戦争があり、病気があり、想像し難い苦労があったはずだ。

それでも険の無い顔でいられたのは、祖父の心の優しさや強さだったのかもしれない。


もう一度だけ会えるなら、祖父の人生のことを祖父の口から聞いてみたい。

でも、それは永遠に叶わない。


そのことを自覚した途端、初めて悲しみがこみ上げて、涙が溢れた。
その他
公開:19/12/03 15:59
更新:20/01/12 13:31

UTK( 東京 )

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