緑の篝火

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「これ、気持ちです」
花束を引き取りに行って、店員さんにもらった。
見舞いって言ったよな。しかも名前が駄目だろ。仮にもプロなら考えろよ。
……とも言えず、愛想笑いで見切り品を提げ、店を出た。赤い花が終わりかけの、ガーデン・シクラメンの鉢植え。
名札に若葉マークがあった。鉢を隠して見舞いを済ませ、帰ってから庭の隅に穴を掘って埋めた。
根付くと寝付くが掛かるから、見舞いに鉢は厳禁。帰って来れたら、本人は喜ぶかも知れないが。低い期待値に懸ける気になれず、世話はしなかった。赤いシクラメンは、クリスマス頃には雪に埋もれた。別名が篝火花のくせに、ちっとも温かくなかった。

……と、思ったのが何年か前。
まだ蕾の上がらない株に、こんもり茂った『気持ち』をつつく。緑を縁取る白いハートより、花束の赤バラが少し多い。作りながら、彼女は気付くかな、それとも。
仏壇で笑う父に手を合わせ、気合いを入れて玄関を出た。
青春
公開:19/12/01 18:45
シクラメン 篝火花(かがりびばな) ※画像はガーデン(庭植え)用

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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