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「じいちゃんの手はすごいね。職人さんみたいだね!」
 邪気のない真っ直ぐな褒め言葉が嬉しくて、遊びに来た孫のために道具をこさえた。管理の手の届いていない鬱蒼とした裏山に自生する竹を切り倒し竹馬や水筒に加工して渡してやると、孫はいつも嬉々として受け取ってくれたものだ。半分に割った中身の節目を金槌とのみで削り落として、やすりをかけて滑らかにして。庭先で流しそうめんを催したあとなんて、宿題の絵日記に花丸をもらえたと電話をかけてきてくれたな。
 俺の手はもう皺だらけになって、肉もこそぎ落ちて。枯れ枝のように節くれだったそれを孫の背中にそっと添えた。
 無事成年を迎えたと挨拶にきてくれた孫の背中にそっと添えた。
 竹よりもあっという間に伸びちまった気がする、立派な男の背中に。これからはお前の時代だぞ、と。そんな思いを込めて。
その他
公開:19/12/01 16:37
更新:19/12/01 16:39

ぴろしき

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 @yosisige

上記アカウントにて駄文を垂れ流しているインターネットポエム揚げパン。
にほんご、すき。

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