甘雲

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雨雲ならぬ甘雲は、綿飴のような形をしており、文字通り甘い雨を降らせる雲だ。
甘雲は、日本の場合、元号が変わった年末に現れる傾向にあり、二〇一九年は平成から令和に変わったから、まさにこの年末だ。
甘雲は縁起のいい瑞祥の雲とされており、甘雲で降った雨をクリスマスならホットケーキのシロップとして、また正月なら甘酒や善哉の甘味料として使うと、その一年間が健康で幸福に過ごせると言い伝えられている。
甘雲が真冬に現れると、雨ではなく雪を降らせることが多く、甘い雪は、パウダースノーならぬケーキにふりかける白い粉、パウダーシュガーのようだ。
甘雲は、ごくまれに雹を降らせることもあり、その形が金平糖に似ているため、これをモデルに、明治時代から皇室の慶事の席で引出物としてボンボニエールに入った金平糖が贈られるようになったという。
ただ、甘雲によって地上に降った雨や雪は、べとべとした粘り気による甘害が玉に瑕だ。
その他
公開:19/12/01 07:12
更新:19/12/01 07:15
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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