いつかの窓

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あの日は下校時間にあわせたように雨が止んで、沖縄の青空に、ほんの一瞬だけ雪が舞った。
だいだい色の長靴に黄色の傘。緑のシャツに赤いスカート。紫色の風呂敷。ひとつひとつは気に入っていたのに、おかしな色のあの日の私。
仲良しの藍ちゃんが転校して、ひとりで帰るのが寂しかった。いつかまた会える。そのいつかがいつかわからないから、私の心臓は毎日じゅうじゅうと焼肉みたいな音を立てて、不安な気持ちを焦がしていた。カレンダーに「いつか」はない。
藍ちゃんは移民として両親とブラジルに渡った。
「いつかっていつ?」
手紙で藍ちゃんを困らせた私。
いつも一緒に遊んだ道端で、おかしな色の私が水たまりに映る。私が泣くと水たまりは揺れて、その中に藍ちゃんの笑顔があった。
いつか藍ちゃんから届いた手紙には水たまりの中に虹が描かれていて、私を見たと書かれていた。60年前のあの日、あの窓で、私達は確かに向き合っていたんだ。
公開:19/12/02 15:55

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