うそうそ

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紙の上、うそが飛んで来て木の実をつつく。
記のみ記のまま描き散らした、虚実がそんなに美味いのか?頭は黒く肚はグレー、喉は実の汁に染まって真っ赤っか。ふぃいふぅ、ふぃいふぅ、肥えた身体に似合わず鳴き声は甘い。嘘。嘘。人語に訳すとそう聞こえる。
こいつは雄だ、という事は知っている。浮気者の嘘つきめ、消してやろうと消しゴムを構え、枝の下からごしごし擦る。口に虚ろを頬張ってうそがわめく。嘘。嘘。お前だって嘘つきだ?ああそうだ、それがどうした。
尾羽の端にカスを散らしたところで、外から別の声がする。地味な茶色が一鳴きすると、切れた尾を振って、うそはあっさり紙を抜けた。
ふぃいふぅ、ふぃいふぅう、嘘じゃなくて夫婦だったのか。薄情者の羽ばたきを見送り、紙の上に目を戻して溜め息。
――あいつめ、全部食って行ったな。
枯れ枝に新しい実を描き込みながら、夕方5時の鐘を聞く。
やれやれ、また今日も、うそうそ時。
ファンタジー
公開:19/12/02 14:09
鷽(うそ) 日本の野鳥。雌雄異色 うそうそ時:夕暮れまたは夜明け

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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