ペトリコールと天の川

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少女の父親が昨日の夜から帰っていない。
彼は少女が心配だったので、雨が止んだあと家を訪れた。
少女は盲目だった。彼の顔を見たことすらない。
「天の川は見えないけれど、雨の匂いなら感じられる。あなたの連れてくる雨の匂いがとても好き」
彼はそっと少女の頬に手で触れた。父親に毎日殴られていた少女の顔には酷い痣がある。
「……なぜ泣いているの?」
「僕ら、もう会えないから。僕は遠くへ行かなくちゃならない」
少女は頬に触れた彼の手を両手で包んだ。
「離れるのなんて怖くない。運命さえ繋がっていればきっとまた会える。だから、帰ってきて」
少女は彼を抱きしめた。
「星の見えない夜でいいから、また雨の匂いを纏って会いにきて。あなただってすぐにわかるように」
「ごめん、僕は……」
「言わないで。知ってるから。あなたは、優しいひとね。……愛しているわ」
少女を虐待する父親はもういない。彼は翌朝、出頭した。
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公開:19/12/02 11:06
更新:19/12/02 11:30

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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