訃報

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 電光掲示板でニュースを流していたのを知っているだろうか。
 下から上へ、右から左へ、文字が流れていくあれだ。
 そんな物が残っていた時代の話だ。

 冬の交差点、信号待ちをしている時、私は向かいの電光掲示板に、昔愛した人の名が流れていくのを見た。
 ポケットに手を入れたまま、吐く白い息の向こう。一つ一つ現れるオレンジ色の文字が、年齢的にはまだ早い死を静かに告げる。
 病死だった。
 私を捨て、地位と名声を選んだ人の訃報は、私に大きな衝撃を与えはしなかった。そのかわり、真冬の雨のように、私の体から熱を奪い、体も心も凍てつかせた。涙も出ない。泣いたところで、あなたは、もうこの世にいないのだ。
 
 あ

 じゃあ、だとしたら


 あの時、殺して犬に食わせたのは誰だったんだろう?
 
 思い出すことはできなかった。
 いまだに誰だかわからない。
 
 
ミステリー・推理
公開:19/12/01 23:09

堀真潮

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