人魚の嫁入り

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晴れた空に雨。狐の嫁入りだ。おまけに虹までかかっている。
そんなこともあるもんなんだなと気持ちを切り替え、もう一度釣り針を投げ入れた。川の水面に、ぽっぽっと波紋が続く。それ以外はいつもと同じ。のどかなもんだと考えていると、手応えを感じた。すぐさま引き上げると、意外と獲物はでかいようだった。
「ありゃ」
顔を出したのは少女だ。唇に針が刺さって血が出ている。丸い目を潤ませて、見上げていた。
「お見逃しください。これから結婚式なのです」
そうか、と針を抜いてあげた。それから薬を塗ってやった。嫁入り前の体に傷をつけて、バツが悪かった。
「ありがとうございます」
少女はパシャリと尾を打ち付けた。見事な婚姻色だ。七色の輝きが照り返す。
「あ、これってそういうこと?」
空を指差すと、少女は頷いた。
そんなこともあるんだな、と少女を見送った。
家に帰ってから、あれは男だったなと気付いて、少し悔しくなった。
ファンタジー
公開:19/12/01 20:31
川魚釣りが無性にしたい! オイカワの婚姻色

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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写真は全て自前でやっています(笑)

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