『最高の1日』 絵本との日々から

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ボロボロだった。
数えきれないほど開かれ、私の体はすりきれ、そして幾度目か身が裂けた。
だが私の持ち主の彼は一生懸命にテープで修復して、また私に目を通す。

私達の業界に伝説的な言葉がある。
韋編三度絶つ。
韋とは昔の書物を綴じた革紐。これが切れるほどに繰り返し読む。それが三度も起こるほど熟読する行為を言う。
私は愛されていたのだ。
例え汚い見た目でも私は本棚に加わってくる新しい本達に胸を張る。
しかしいつか手に取ってもらえなくなるだろう。彼や誰かに汚い本だと処分されるだろう。
それでも私に刻まれた文章が彼の中に生き続け、力となるなら、何も怖い事はない。
いつの日かこの幼い彼が大人になった時、私を開いて夢中になっていたその日々を
最高の1日だったと思い出してくれるなら。
いや、私と共に過ごした日々が彼の人生の最高の1日へと繋がっていくのなら。
私はこの身が裂けて灰になろうとも、本望なのだ。
ファンタジー
公開:19/11/29 18:50

とーしろさん

はじめまして~。
いつだって初心で、挑戦者のこころでぶっ込みたい素人モノ書きです。

沢山の方々に支えられ、刺激を与えられ、触発されて今日ももちょもちょ書いております。
一人だけでは生み出せないモノがある。
まだ見ぬステキな創造へ、ほんの少しずつでも進んでいきたい。

ショートショートというジャンルに触れる切っ掛けをくださった、
月の音色と大原さやかさんを敬愛し感謝しております。

興味をもって読んでくださる全ての方にも、ありがとうございます~^^

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