ひもは?

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 玄関で突然スウエットのズボンが下がった。ひもを結び直そうとしたがひもがない。腹が減ったのでコンビニに行こうとしていた矢先だった。履きかけていた靴のひももないし、他の全部の靴のひももない。状況を確かめようと蛍光灯に手を伸ばしたが蛍光灯のひももない。その時、ハラリ。とつけていたマスクが床へ。当然ひもがない。もう外出する気は失せた。カップ麺を食べることにして湯を沸かす。換気扇のひももないが、油ものじゃないから構わない。カップ麺の蓋を開けると、かやくとスープの袋しかない。麺は? ああ、ひもみたいだからな…… と、危うく納得しそうになって頭を振る。俺は何一つ納得していないぞ。1ダース全てに麺がない。他には? と見渡すと、ブラインドのひももベランダの洗濯ロープもない。俺は何となく頷いてトイレに入る。便座の蓋を開けると、無くなっていた全てのひもがあった。俺は躊躇せず水を流し、ずっと便器を見つめている。
その他
公開:19/11/29 18:46
更新:19/11/29 18:58

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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