こっちへ

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やっぱり、こんな所へ来たのが間違いだった。

彼女だって、とうに喰われてしまったに決まっている。見渡す限り、敵、敵、敵。ナイフも銃も効かない。やつらは不死身のゾンビ。

そこら中血の臭いで、胃が裏返りそうにもだえる。
最後に一目、会いたかった。もっといえば、助けてやりたかった。一緒に行きたい所だって、まだまだたくさんあったのに。せめて、あいつらだけは逃げ延びてくれ……!

弾切れで、防御もできなくなった。ゾンビ達がじわじわと距離を詰めてくる。
ちくしょう!恐怖で身体が動かない。死ぬことがこんなに怖いなんて。夢中で闘っていた頃は知らなかった。
醜い、顔とも肉ともつかぬ物が迫る。怖い、嫌だ、怖い怖い怖い……


がぶっ。


「よう!新入り」と、隣のゾンビが笑いかけてくる。
一気に力が抜けて、言いようのない幸福感に包まれる。そうだ、科学室の方へ逃げていったあいつらも助けてやらなくちゃ……。
ファンタジー
公開:19/11/29 13:56
更新:19/12/02 16:38

つゆ

森絵都さんの『ショート・トリップ』が大好きです。

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