炎を喰らう猫

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通い猫モクの好物は煙草の煙だ。
私が庭先で紫煙をくゆらせていると物干し台の上に飛び乗り、散っていく煙を器用に手で集めて、綿菓子のように丸めてパクリとかぶりつく。そして満足そうに喉を鳴らして、もっとくれと催促するのだ。
灰皿に煙草を置いておくと、モクは煙と一緒にタバコの火まで飲み込んでしまう。最初にそれを見た時、驚いてモクの口の中を覗きこんだが、モクは火傷もせずにケロリとしていた。
火が消えた煙草に再び火をつけて、改めてモクを見つめる。
炎を喰らう猫。
こいつはとんでもないぞ。

ある日、近所でボヤ騒ぎがあった。すぐに消防車が駆けつけたが、何故か火は消えていたらしい。
その時、縁側で眠るモクのお腹が膨れているように見えたのは気のせいだろうか。

それからしばらく経ったある日、富士山が噴火したが、すぐに鎮火したという奇妙なニュースが流れた。
縁側のモクは素知らぬ顔でゲフッと白い煙を吐き出した。
ファンタジー
公開:19/11/30 16:23

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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