幻想檸檬

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 貴方と別れるとき、私はたくさんの貴方を許した。
 待ち合わせに遅れること、髪型の変化に気づかないくせに他の煙草の匂いには敏感なとこ。すぐ可愛い子を目で追うとこ。
 許してあげる。実は、私が男という生き物をよく知らなかったせいかもしれないから。
 
 裏がえったままの洗濯物や、少し残されたグラスの麦茶も、いつからか無くなった言葉も……。
 私だけが頑張ってたんだね。でもいいの。私の成長を手助けしてくれてありがとう(笑)
 
 
 実は一つだけ、許せないことがあるの。
 
 
 本当はね。貴方との想い出は綺麗にトリミングして、甘く蕩けるものにしたかったんだよ。
 だから、最後のキス……それが煙草の味だったのが許せないの。レモンとか、そんな子どもじゃないわ。でも、あの味が全てになってる私がいるのよ。
 
 いつか他の人の口づけを貴方と比べることなく、苦味が甘味に変わる、そんな日が来るのかしら。
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公開:19/11/17 13:22
更新:19/11/30 23:23

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