革張りのゆず茶

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茂木は漫画の編集者だ。
持ち込みの漫画を読むこともあるが、正直どれも似たような作品ばかりでいささかウンザリしていた。
だから応接スペースで新人漫画家から原稿を受け取り、
<湯呑み職人の成長物語>
というキャッチフレーズを見たとき、これは変わった切り口だなと思った。
読んでみると、湯呑み職人は新しい湯呑みを開発するべく奮闘し、ついに革張りの湯呑みを完成させたのだった。これは大ヒットするのだが、すぐに動物保護団体から非難されてしまう。主人公は保護団体のトップと会談するのだが、そのときに革張りの湯呑みにゆず茶を入れて差し出す。相手はそのゆず茶を吞んで「うまい!」と感動し、主人公を許して終わる。
「なぜこれで問題が解決したことになるんですか?」
茂木は質問した。
漫画家はしばらく沈黙し、「もういいです!」と怒って出ていってしまった。
茂木はそこで逃げなければ成功するのに、と残念に思った。
青春
公開:19/11/30 09:43

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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