水天神~参道

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境内の手水舎で清めを済ませ、石畳の参道を歩く。目地も綺麗な白い道の、中央半歩右を、巫女は左を進む。神の道であるから、中央は不遜。結婚する年の初詣、妻を諌めたら眉を寄せて立ち止まった。あの時は私が左、彼女が右を歩いた。間に冬の風を通しながら、繋いだ掌が温かかった。
白衣の袖が視野の端に振れる。どんなに伸ばしても、指先に体温を感じる事はない。自分から放したくせに、私はいじましく面影を追っている。
昼前の陽射しは明るくて、参道の照り返しが眩しくて、そのせいにして視線を伏せた。
参道と産道――祈って叶うなら、離れたりしなかった。
「建立されて、新しい様ですね」
「平成二年です」
なるほど。神社の方が私より若い。奇しくも妻と結ばれた年だと知り、肩に老いが圧し掛かる。十二支が回るだけ連れ添い、それが区切りだった。今では独りの時間の方が長い。
追い陽が私の前に、子供丈の影を投じる。
影は一つきりだった。
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公開:19/11/28 13:05
更新:19/11/29 01:30

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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