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水路の橋を渡って鳥居をくぐると、右手にもう一つ鳥居が現れた。こじんまりした境内の奥、木造の社殿が鎮座する。参拝客も宮司の姿もなく、額縁を覗いた様な奇妙な静けさに耳鳴りがした。脇を流れる水音すら、鳥居に堰かれてしまったかの様な。
「ここは何と言う神社ですか?」
「水天神です」
私の問いに、巫女は背中で答えた。水天宮の地口だろうか、天神なら馴染みがあるが。妻の郷里の風習を思い、また鞄が重くなった。
「鳥居の由来を御存知ですか?」
「鳥の止まり木、結界、門など諸説あったかと」
「『通り入る』または『取り入る』。神気の通り道で、留めの関です。その石を鳥居の上へ投げて御覧なさい」
空いた手に、いつの間にか小石を握っている。言われるままに放った。
――ぽちゃん。小石の当たった笠木が飛沫を跳ねた。
「……窪みがあるのですか?」
「招いておいでです」
胸に波紋が立つ。袴と下げ髪が、逃げ水の風情で先を行く。
「ここは何と言う神社ですか?」
「水天神です」
私の問いに、巫女は背中で答えた。水天宮の地口だろうか、天神なら馴染みがあるが。妻の郷里の風習を思い、また鞄が重くなった。
「鳥居の由来を御存知ですか?」
「鳥の止まり木、結界、門など諸説あったかと」
「『通り入る』または『取り入る』。神気の通り道で、留めの関です。その石を鳥居の上へ投げて御覧なさい」
空いた手に、いつの間にか小石を握っている。言われるままに放った。
――ぽちゃん。小石の当たった笠木が飛沫を跳ねた。
「……窪みがあるのですか?」
「招いておいでです」
胸に波紋が立つ。袴と下げ髪が、逃げ水の風情で先を行く。
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公開:19/11/28 10:42
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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