砂の男

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 ずらりと並べた調味料の小瓶には、私が厳選した砂が詰まっている。これを冷たいごはんに振りかけて食べるのが、私の贅沢だ。
 始めて砂を旨いと思ったのは、通っていた保育園の砂場の砂だ。歯ざわり、舌触り、喉越し、全てが素晴しかった。いつか、あの砂にまた出会えたら、誰に咎められることもなく口いっぱいに頬張りたいと思う。
 砂の味は色によって異なり、おおまかに言って、黒は苦い。赤は鉄っぽい。白は塩っぱい、という傾向があるが、実際には、一つとして同じ味はない。
 私は、日本の砂丘効き砂コンテストを企画していて、賞品は世界で最も古いナミブ沙漠の砂一か月分だから、皆様のご参加を待っているよ。
 さて、今日の風呂は南知多の千鳥ヶ浜の砂にしよう。湯船に砂を満たし、肩まで浸かる。きめの細かい砂が、体中に隈なく回る。
「ああ、まわるまわる」 
 サラサラと身体と頭を洗ってさっぱりする。ベッドの砂はアラハビーチだ。
その他
公開:19/11/27 22:18
更新:19/11/27 22:19
シリーズ「の男」

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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