月光飴

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 真冬の満月の夜の縁日に、金色の鼈甲飴ではなく、白金色の月光飴を売る店があるという。
 噂だけは水が滲むように広がっていた。
「一度、食べてみたいものだ」
 切望するも、なかなかその店に行き当たらない。
 何せ条件が難しい。夏や秋の祭りの時期ならともかく、寒い冬に開かれる縁日は少ない。しかも雲一つなく、ただ月だけが輝く夜でなくてはならない。

 だが、ようやく巡り合えた。

 縁日の一番外れにひっそりと、その店は出ていた。テントには月光飴の文字。
 胡麻塩頭のおじさんが作る、白く透明な兎や鳥が、キラキラと店先に並んでいる。
「一つください」
 私は三日月の形の飴を買い、ワクワクしながら口に入れた。
 
 ひんやりと冷たい感触。薄く儚い月光飴は、口の中でパキンと割れたと思うと、スウっと溶けて、後にはほのかな甘さだけが残る。
「おじさん、これ……」

 ただの凍らせた砂糖水だね。
ファンタジー
公開:19/11/27 19:52

堀真潮

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