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紺のブレザーにエンジのネクタイのしのぶが微笑む。

「よしくん、なんて顔をしてるの? ほら、笑顔、笑顔だよ。」

ふと目を覚ました私は今のが夢だったと把握する。いつの間にかデスクで寝ていたらしい。たしかに、キーボードの跡がついた顔など誰かに見せられたものじゃない。

このところまともに小説も書けず、いつも考え込んだ不機嫌な顔をしていたのは事実だ。しかし、なぜ今頃しのぶの夢など見るのか? 彼女は20年以上前に亡くなっているのだ。一時期好きだったこともあった。けっきょく告白もできずにいたうちに彼女は交通事故でこの世を去った。

「あなた、大丈夫?」

ゆきが声をかけてくる。しのぶの妹だ。

「ああ。しのぶの夢を観ていたよ。綺麗だった。」

「そうなのね。」

私はバカなことを言ったと思いつつ、しのぶを主人公にした小説を書こうと思うようになっていた。

私はとても卑怯な男だ。
その他
公開:19/11/27 19:46
194 男の思い出は美化される 女性に対して失礼 オチがない話

武蔵の国のオオカミ( ここ、ツイッタランド、タイッツー )

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