弱い医師

「ここは禁芋です！」
離婚調停中に裁判所を追い出された私は、表の通りでフライドポテトを吸っていた。
私はどうしても芋がやめられない。
この辺りは路上喫芋禁止エリアで、私は係員にこっぴどく叱られたうえ罰金を徴収された。なんて生きづらい世の中だろう。
妻はヘビーポテターである私との生活に見切りをつけ、娘を連れて家を出ていった。私は納得がいかず、弁護士を立て親権を争うことにした。
それなのに私は裁判官の前でも芋を吸ってしまい、その常習性を厳しく指摘された。これでもう娘とは暮らせないだろう。娘はかわいい。しかし私は意志が弱い。そしてポテトはうまい。吸っても食べても最高だ。やめられるはずがない。
私は近所の病院に禁芋外来があると聞いて訪ねてみることにした。
診察室は視界が悪く、タバコの煙で充満していた。
「まあ無理はなさらず、まずは数を減らしましょう」
と、医師は弱い笑みを、ぷかぷかと浮かべていた。