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念願の煙猫を手に入れた。
煙だからペット禁止のアパートでも大丈夫。レトルトの中身を鍋に入れて、蓋をして火にかけること五分。モクモクと黒い煙が噴き出し、猫の形になっていく。ロシアンブルーのような長い尻尾とスマートな体型をした美しい煙猫だった。
「よし、お前はクロよ」
クロを抱き上げると綿菓子のように軽かった。
クロが暴れて私の手から逃れ、金色の瞳でスンと私を見つめた。
可愛い。掌がすすで汚れるのも気にならない。
それからクロは私の部屋の中を運動会のように走り回った。クロが走った所には黒い跡が残った。
後で掃除するのが大変だけど、まあいいか。
その時だ。居間に置いていた空気清浄機のセンサーが反応し、一瞬にしてクロを吸いこんでしまった。
「きゃああ!」
私が悲鳴を上げた次の瞬間、真っ白な猫が吹出口から飛び出した。
「ええぇ…」
これから始まるクロ改め、シロとの新生活に私は心を躍らせたのであった。
ファンタジー
公開:19/11/29 10:57

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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