唇に人差し指

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閑散とした公園のベンチで、彼女は一人座っていた。彼女に目が止まったのは本当に偶然だった。頑なな他者との壁を感じる、キンとした空気を纏う女性だった。そんな彼女の表情がふと緩み、笑顔になる。視線の先には朗らかな笑顔の女性だ。走り寄り、彼女の隣に座る。二人はハイタッチして喜び合う。しかし、そこに歓声はない。代わりに手話が宙を舞った。
(そうか、声が)
好奇心にかられ、二人の女性を見つめていた。手話の合間に重なり合う掌。交わし合う笑顔。静寂の談笑。空気がにわかに賑やかになり、こちら側も心が暖かくなった。

重なる手と手。合わさる目と目。
不意に間が空き、触れ合う二人のーー。

時間が止まった。食べてたおやつを落とした。パッと二人が振り向いた。その驚きの表情に、申し訳なくて逃げ出した。
このことは誰にも話してない。ダンスのように手を取り合って交わされる沈黙の逢瀬は、今もこの胸を焦がし続けている。
青春
公開:19/11/29 09:05
更新:19/11/29 09:07
目撃シリーズ 趣味全開

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

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