キジトラの猫ちゃん

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「ギャピー」
 鳴き声が駐車場に響いた。見に行くと、黒、茶、黄色のキジトラ柄の猫が倒れていた。毛はカラスについばまれ、顔には虫がたかっていた。僕は、助からないよごめんねと、去ろうとした。
「おばちゃん、助けてあげて」
 少女が、中年女性に声をかけた。女性は、猫を袋に入れて獣医へと連れていった。僕は、逃げようとしたことを恥じ、二人の後ろをついて歩いた。
 獣医は猫を入院させた。僕も力になりたくて、女性に治療代を預けた。
 猫は翌朝亡くなった。見送るため、三人で病院に集まった。受付の人が、亡骸を箱に詰めてくれた。赤、黄、青の花に囲まれ、猫の顔は穏やかだった。
「助けられなくてごめん」僕は謝り、
「生まれ変わって家の猫になって」少女も泣いた。女性は、無言で猫を撫でた。
 猫好きというだけで、見知らぬ三人が出会ってキジトラちゃんを悼んだ。
 これは、キジトラからの最初で最後のプレゼントだった。
その他
公開:19/11/29 01:43

吉村うにうに( 埼玉県 )

はじめまして。田丸先生の講座をきっかけに小説を書き始めました。最近は、やや長めの小説を書くことが多かったのですが、『渋谷ショートショート大賞』をきっかけにこちらに登録させていただきました。
飼い猫はノルウェージャンフォレストキャットです。
宜しくお願い致します

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