キジトラの猫ちゃん
9
7
「ギャピー」
鳴き声が駐車場に響いた。見に行くと、黒、茶、黄色のキジトラ柄の猫が倒れていた。毛はカラスについばまれ、顔には虫がたかっていた。僕は、助からないよごめんねと、去ろうとした。
「おばちゃん、助けてあげて」
少女が、中年女性に声をかけた。女性は、猫を袋に入れて獣医へと連れていった。僕は、逃げようとしたことを恥じ、二人の後ろをついて歩いた。
獣医は猫を入院させた。僕も力になりたくて、女性に治療代を預けた。
猫は翌朝亡くなった。見送るため、三人で病院に集まった。受付の人が、亡骸を箱に詰めてくれた。赤、黄、青の花に囲まれ、猫の顔は穏やかだった。
「助けられなくてごめん」僕は謝り、
「生まれ変わって家の猫になって」少女も泣いた。女性は、無言で猫を撫でた。
猫好きというだけで、見知らぬ三人が出会ってキジトラちゃんを悼んだ。
これは、キジトラからの最初で最後のプレゼントだった。
鳴き声が駐車場に響いた。見に行くと、黒、茶、黄色のキジトラ柄の猫が倒れていた。毛はカラスについばまれ、顔には虫がたかっていた。僕は、助からないよごめんねと、去ろうとした。
「おばちゃん、助けてあげて」
少女が、中年女性に声をかけた。女性は、猫を袋に入れて獣医へと連れていった。僕は、逃げようとしたことを恥じ、二人の後ろをついて歩いた。
獣医は猫を入院させた。僕も力になりたくて、女性に治療代を預けた。
猫は翌朝亡くなった。見送るため、三人で病院に集まった。受付の人が、亡骸を箱に詰めてくれた。赤、黄、青の花に囲まれ、猫の顔は穏やかだった。
「助けられなくてごめん」僕は謝り、
「生まれ変わって家の猫になって」少女も泣いた。女性は、無言で猫を撫でた。
猫好きというだけで、見知らぬ三人が出会ってキジトラちゃんを悼んだ。
これは、キジトラからの最初で最後のプレゼントだった。
その他
公開:19/11/29 01:43
はじめまして。田丸先生の講座をきっかけに小説を書き始めました。最近は、やや長めの小説を書くことが多かったのですが、『渋谷ショートショート大賞』をきっかけにこちらに登録させていただきました。
飼い猫はノルウェージャンフォレストキャットです。
宜しくお願い致します
ログインするとコメントを投稿できます