落紅葉の舞踏家

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 夜明け前の公園で、私はしなやかに舞う男性を見ていた。彼の舞踏は朝凪に微風をもたらし、落紅葉が散らばっていく。
「素敵な舞踏ですね」声をかけると、彼は一瞬の険しい眼差しの後、柔和な微笑みを返してくれた。
「世界は縛られていて淀んでいます。僕はそれをほどいています」

 同じ日の帰り道。夜更けの同じ公園で、私は激しく舞う男性を見た。彼の舞踏は闇を震わせ、落紅葉が嵩を増していく。
「力強い舞踏ですね」声をかけると、彼は一瞬の険しい眼差しの後、悲しげな微笑を返してくれた。
「世界をほどいてしまう連中がいます。僕は世界を結びなおしています」

 私は締め付けられるような悲しみを感じて、帰宅した。

 翌朝。その公園で異常な遺体がみつかった。一人分の男性の骨と内臓とが、人一人分の皮を正方形に開いた上に、きちんと並んでいたという。
 多分、臍をほどかれたんだ。と私は思い、少し悲しく、少しうれしかった。
ファンタジー
公開:19/11/26 10:05
宇祖田都子の話 「臍をほどく」は、 伊集院光さんが ラジオで使っていた表現

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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