海辺の情景

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僕は海辺を歩いている。

はてしなく広がる水平線は無辺遠でほのかにかすみ、どこまでもひびきに満ちている。

澄みきった朝空は気品にあふれ、白い砂浜は壮麗な日の光を受けて砂金のように輝いている。

自分より遥かに大きな海と大地に抱かれて、今自分がここにいること。

始まりも結末もない、その一つの事実に、僕はとても満足している。

海辺には、犬を連れた女性や、老いた夫婦が行き交っていた。
すれ違いざまに彼らと笑みを交わすが、声を出す者はいない。ここでは犬でさえ、寡黙だ。

語り合うのではなく、もっと別のものとひびき合うためにここへきたことを、互いに自覚しているようだった。

すべての物語はここから生み出されるのだと、美しい輝きの中で僕は思った。
青春
公開:19/11/25 21:58

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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