残酷な音

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君は残酷だ。一時も立ち止まったりしない。離れたり近づいたりもしない。
だからこそ何よりも平等で公平なのだろう。
だけど……

充が産まれた後に僕の病気が発覚した。
今の医療では完治することの無い難病。
この歳で余命というものを宣告された。
僕は泣いた。お父さんとお母さんと一緒に泣いた。
充の中に僕の記憶が残るまで生きていられるかわからない。
お父さんお母さん充とたくさん思い出を作った。
充のこといっぱいお世話した。
少しでもお兄ちゃんの記憶があればと思って。
充さ、オムツ替えてる間におしっこするんだ。
お風呂でウンチしちゃうし。
僕より食欲旺盛だ。
三年。
充の記憶に僕は刻まれたかな?
お兄ちゃんって呼ばれたかったな。
僕の時間は九歳の夏に止まった。
六年後、三人が僕の前に立っている。
充は笑顔で言った。
「お兄ちゃん、追いついたよ」

平等で公平な君は死を前に不平等で不公平になるんだね。
その他
公開:19/11/26 12:00

鳴平伝八

なりひらでんぱち
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