ふしめ有〼

『節目を与えてくれる店がある』

その噂を聞き、私は一軒家の前にいる。表札の代わりに『ふしめ有〼』と書かれた札が下げられている、まさに隠れ家的店。
私は意を決して扉を開けた。
こじんまりとした店内は寿司屋のようだ。こんな所で本当に節目を迎えられるのか？
席につく。寿司2貫出された。これを食べればいいのか？
うん。旨い。今まで食べたどんな寿司より旨い。感動すら覚える。でもそれだけだ。私に変わった様子はない。
大将、私に節目はいつ訪れる？
「節目？俺に出来るのはこの寿司でお客さんに『ふ』と『け』を付けて〆る事だけだ」
ふとけを付けて〆る？
「ああ、節目とケジメだ。面白いだろう」
駄洒落かよ！思わず笑ってしまった。
でも、ありがとう。私も覚悟を決めた。妻に正直に話そう。
出産を終えた妻は今、職場復帰の真っ最中だ。
僕はその妻を一家の主としてではなく主夫として支えたい。これが私のふ〆でありけ〆だ。