僕の家出

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―家に帰らないの?家族が心配してない?
路上で声をかけられた。まずい相手かな。
おじさんは自販機で買った缶コーヒーをぽんとくれて、自分の分のプルトップをぷしゅーと引く。
気づけば、ぽつぽつ打ち明けていた。最近家家族に寄り付かれないこと。子供の友達が遊びに来て、僕を「田舎かー」とげらげら笑ったこと。春から秋は納戸に籠りがちになること。
おじさんはうんうんとただ聞いてくれた。
―オリオン、見えるか。あの光は動物が地球に誕生するより昔から届いてるんだ。
―酷い目に遭うケースがあるんだよ。街で意気投合して仲良くなったと思ったら、柄の悪い仲間が押し寄せて、汚い足を何本も突っ込まれたり。うちにおいでって言われて、ついてったら、帰してくれなくなったりとか。
外に電源はないけど、あったかい人もいるんだな。僕はほっこりして家に帰った。

僕を見るなり、母さんは言った。
―お帰り。フリマで売れたし、脚外して。
その他
公開:19/11/28 17:00
更新:19/11/28 16:19
スク― 家出するコタツ

こぶみかん( 関西 )

ssの庭に迷い込んだこぶみかん。数々のお話の面白さに魅せられ、通い始めた。
気が付いたら、庭の片隅に挿し穂されていた。
いつか実を結ぶまでじっくり育つといいね。

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