機械仕掛けの愛

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 亡くなった夫そのままのアンドロイドを作っていただけませんか? と老婦人は言った。
 彼女は夫を亡くしたばかりだった。
「それはできません」
 技術者である私は言った。
 たとえそれが故人であっても、実在の人物と同じアンドロイドを作ることは固く禁じられていた。絶対に架空の人物でなければならない。
「どうしてもできませんか?」
「できません! わかっているでしょう!」
 私はつい大声になった。
「あなたのご主人がなぜ死んだか! 亡くなった奥さんのアンドロイドを作って、当局に処刑されたからじゃないですか!」
「だから作っていただきたいのです」
 
 結局、私は彼女の願いを受け入れた。

 システム上、アンドロイドのメイン電源を切り完全停止できるのは、その所有者(マスター)だけとなっている。
 
 アンドロイドの老夫婦は、微笑みあうと互いの停止ボタンを押し、そのまま静かに動かなくなった。
 
 
SF
公開:19/11/26 21:26
更新:19/11/30 17:16

堀真潮

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