ともだち

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 いつまでもこの手をはなせずにいる。
 君だけは特別。君だけは手を振り解かない。黙って話を聞いて優しげな眼差しをむけてくれる。
 手を繋いだまま学校に行ったらいじめられた。僕は頭がおかしいらしい。手を繋いだまま引きこもった。手を繋いだまま室内を散歩すると君の足がもげた。
 友達を治してくれと親に泣きついた。それはひどく醜悪に顔を歪めた。泣きたいのはこっちだと力尽くで友達を奪い去った。
「多分、君は知っていたよね」
 カウンセラーの声。
「彼は確かに大事な友達だったんだろう。時間が解決する保証はないけれど、これはチャンスなんだ。知っていたよね。皆はクマのぬいぐるみを持ち歩いたりしない。友達になったりしない。これは友人を作るチャンスなんだ」
 言葉は僕の表層を滑り、足を伝って床に流れ落ちていく。
 君のいない世界に興味が持てず目を閉じた。まぶたの裏にうつった君の背中が、やけに遠く見えた。
その他
公開:19/11/24 18:02
更新:19/11/24 18:04

ぴろしき

Twitter
 @yosisige

上記アカウントにて駄文を垂れ流しているインターネットポエム揚げパン。
にほんご、すき。

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