砂川さんになってくれませんか

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 「砂川さんになってくれませんか?」
引越し初日の夜、高校生の少年1名と、小学生4名が訪れて、僕に頭を下げた。
 砂川さんは、この部屋の前の住人で、不登校やネグレクトの子供たちに部屋を開放し、彼らを見守ってくれていた人なのだそうだ。僕は彼らを招き入れてゆっくりと話を聞き、その願いを了承したのだった。
 翌朝、警察が来た。
「砂川泰利。青少年健全育成条例違反で逮捕する」
 私はそんな名前ではないし、何かの間違いではないかと主張した。だが、不動産屋の書類も、勤務先への届けも、マイナンバーも、私が「砂川泰利」であることを証明していた。
「あの子たちに聞けばわかるはずだ」
 そう言うと、刑事は机を叩いた。
「部屋から子供4人の白骨遺体が見つかったぞ。当時、ただ一人だけ助かった少年が、お前が部屋に戻ってきたと通報してくれたんだよ」

『砂川さんになってくれませんか』
 私の身体から力が抜けていった。
ホラー
公開:19/11/24 09:55

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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