人のため

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「人のためと書いて偽ってね」
あいつは偽善者と呼ばれても笑っているやつだった。
葬儀場、線香を立てながら俺が考えるのは生前のあいつのことだった。

頭に馬鹿がつくほどの正直者でお人好し。
その人当たりのいい性格もあって会社の幹部までのしあがったが部下が借金をつくり酷い取り立てを食らっていることを聞きよせばいいのに連帯保証人になり、当座の資金まで融通した。
結局持ち逃げされ、今度は自分が借金取りに追われるはめになった。
それでもあいつは笑っていた。
あいつが助けた連中は恩を仇で返す連中ばかりだった。

だから俺はあいつのために敵を取ることにした。
車を細工するなど造作もなかった。せいぜい地獄であいつに謝るんだな。
奴らの遺影にむけて静かにあざ笑う。
あいつが許しても俺が許さん!
なにしろ俺はあいつの“悪意”だからな! 
ま、こんなクズどもいなくなったほうが『世のため人のため』だろうて!
ホラー
公開:19/11/23 22:43
更新:19/12/07 18:32

ばめどー

ぼちぼちやっていこうと思います。
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