ボトルシップ製作の男

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 ずらりと並んだサントリーオールドの瓶を光に透かして見ると、中に精巧な船舶模型が入っている。その数、五千点以上。全てが現行の船舶を精密な縮尺で再現してあるという。
 ボトルシップを飾っているのは私設の美術館で、海辺にある喫茶店のマスターが趣味で運営している。マスターは、このボトルシップに感激してコレクションしていたが、数が溜まってきたので一般公開することにしたのだ。
 制作者不明。購入代金0円。ボトルシップは全て、砂浜に漂着したものである。
 マスターの夢は、いつかこの制作者に自慢のコーヒーを飲んでもらうことだという。

 これらのボトルシップは、ある男が毎日ウィスキーを浴びるように飲んで罵詈雑言を吐きながら製作し、完成するとサンダルをつっかけて、家の前のドブ川へ投げ捨てているのである。
 男は海を見たことがなく、船に乗ったことも無い。ただただ、金とロマンとを羨んで、呪っているのであった。
その他
公開:19/11/25 14:51
更新:19/11/25 18:42
シリーズ「の男」 bBearさんによる 写真ACからの写真

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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