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繁雄は神社の階段を登っていた。
年齢的に、足腰につらかった。
一段あがる動作にも時間がかかる。
緩慢な動作の間、繁雄はこれまでの人生を想った。
押し寄せるのは、孤独と倦怠感——。

ふと階段の上のほうから二つの人影が降りてくるのが見えた。
少年と少女が手を繋いでいる。
「二十二、二十三、二十四…」
一緒に数を口ずさみながら、一段ずつ降りてくる。
「何をしてるんだい?」
すれ違いざま、繁雄は尋ねてみた。
「階段の数をかぞえてるの」
「どうして?」
少年と少女は見つめ合い、それから同時に答えた。
「ただかぞえてるだけ!」
その目はキラキラとしている。
なんと麗しく清純で無垢なる輝きであろうか。
子供達は繁雄の横を通り過ぎ、また階段を下る。
「二十五、二十六…」
繁雄の目尻には涙が浮かび、感情が込み上げ、やがて握りしめた拳は震えた。
深い溜め息のあと、繁雄は叫んだ。
「この……リア充どもめ!」
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公開:19/11/25 09:28

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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